学科試験では硬派な数式から法令まで学ぶ
気象予報士試験は毎年8月下旬と1月下旬の年回行われる国家試験だ。受験資格に制限はなく、ときには中学生が合格してニュースになったりもする。しかし、合格率は約5%と低く、難関資格として知られている。
試験の科目は、「学科一般」「学科専門」「実技」の3科目あり、それらを1日で受験する。学科試験(学科一般と学科専門)はマークシート式で、実技試験は記述式だ。
学科一般の内容は、気象学の基礎である。
つまり、「雨はなぜ降るのか」「気温はなぜ上がるのか」「風はどのように吹くのか」という理論を学ぶ。物理の基礎知識が必要で、数式も出てくる。「自然が好き」「空を見上げるのが好き」という理由で気象予報士試験の勉強を始めると、いきなり硬派な数式が登場するので心が折れる人は多いはずだ(かくいう私もそうである)。
かと思えば、学科一般では気象業務法や災害対策基本法などの法令についても出題される。しかも、この法令の問題の出題比率は15問中4問と高いため、なるべく間違えないようにしなければいけない。数式に慣れてようやく理系頭になってきたかと思ったら、今度は法律も覚えなければいけないので、これがまたきついのだ。法令の内容は、要するに「民間人(気象予報士)が観測や天気予報をするときの決まり」や、「災害発生時に関係省庁や自治体、報道機関などはどういう動きをするのか」ということである。気象予報士は、資格を取ったら研修を経なくても気象予報士として名乗ることができるため、合格した時点で予報業務に関する最低限のルールを頭に入れる必要がある。だから法令の問題が出題されるのである。
「学科専門」では、おもに気象庁の業務についての内容だ。観測の方法や予報の作り方、予報の種類とその特徴について盛り込まれている。これについては、気象庁の尽力によってより精度の高い予報や、減災を目指した情報伝達の方法がアップデートされ続けているので、最新ニュースと気象庁ホームページのチェックが欠かせない。
そして「実技試験」では天気図を書き、データを読み込んで予報を行い、それによってどんなことに気をつけるべきなのかを考察する。この実技試験は時間が短く、全問回答するのは至難の業だ。実際の予報業務では時間の制約がある中で迅速かつ正確な判断を下さなければいけないため、短い時間での回答を求められているのだという。
実技試験は試験が始まると、問題用紙をミシン目で切り離す音が会場中にビリビリと鳴り響く。問題用紙を切り離さないと、ものすごく解答しにくいからだ。これは初めて受験する人にとってはびっくりする風景であり、NHKの連続テレビ小説「おかえりモネ」でもヒロインがあっけにとられるシーンがしっかり盛り込まれていた。ちなみに、実技試験には色鉛筆やデバイダー(両方が針になっているコンパス)など必要な道具がたくさんある。受験会場が大学の大教室の場合、机が斜めになっていて道具が落ちやすいので、集中力が乱れがちである。
学科試験は市販の参考書や気象庁ホームページを見て独学で勉強することが可能だが、実技試験ともなると独学は難しい。専門のスクールに通い、講師に回答を添削してもらうのが合格への近道である。