気象台に緑が多い理由
仕事柄、横浜地方気象台に何度か訪れたことがある。横浜の山手地区、洋館や外国人墓地の立ち並ぶ観光エリアの中に横浜地方気象台は存在する。昭和初期のアール・デコ調の本館と安藤忠雄設計の新館は一見の価値がある。敷地内に入ると、思いのほか緑が多いことに驚く。庭にはたくさんの観測機器が設置された芝生の露場があり、その周囲にはよく手入れされた木が植えられているの だ。そして、見上げれば解放感いっぱいの広い青空。かつてはここで職員が空を目で見て観測を行っていた。素敵な建築と自然豊かな庭を見ると、心が洗われる。横浜地方気象台は、無料で見学できる山手散歩の穴場スポットなのである(ただし、現在はコロナ禍ということもあり、一般公開は中止されている)。
なぜ、地方気象台にはやたらと緑が多いのか。それは、生物季節観測を行っているからだ。気象庁で観測するのは気温や降水量だけではない。さくらやあじさい開花、いちょうやかえでの紅葉など、生き物がその年初めてどうなったのか、何をしたかも記録しているのである。それは、植物の開花や紅葉が、気温や降水量などと密接に関わっているからだ。
ただ、生物季節観測を行ってはいるものの、気象庁は今は桜の開花予想を行っていない。予想を出すのは、民間気象会社だ。各社の予想には、桜の開花が予想される日が線で結ばれている。これが桜前線である。