仕事が遅い人はサボっているのではなく、困っている
「見えるクラウド®ログ」とは誰がどのようなファイルを開いたか、どのアプリケーションを使用しているか、Excelでどれだけの時間を使っているか、さらにどのファイルにどれだけのタイピングをしているかなど、詳細な業務ログが自動的に報告されるサービスだ。
業務の進捗や働き方の新しい形態を支援する一助を担い、特に在宅ワーカーやテレワークにおいて、業務状況を透明にすることで効率的な働き方ができるようサポートしている。
現代の労働環境に則した大変便利なサービスである一方、このような仕組みは「監視社会化」を加速するとみなされ、ネガティブな評価をされることが少なくない。
大抵の場合、ネガティブな面が強調されるときは、効率的に仕事を進めている人は良い評価を得られ、非効率な働き方をしている人は評価が 下がるといった考え方がなされる。しかしむしろ「見えるクラウド®ログ」は後者のサポートに力点を起きたいと考えている。
非効率な働き方をしている人は「サボっている」というよりも「困っている」からだ。
「困っている」人は自分が何に躓いているのか言語化できないことが少なくない。しかし、仕事の「躓きポイント」をデータで示すことによって、サポート体制が築かれ、解決策を示すことができる。
私たちはすでに見られることに慣れている
仕事ぶりが見られることがポジティブに働くことがわかってもなお、「監視される」ことの息苦しさは簡単には拭えないのではないだろうか。しかしながら、私たちはもう「見られること」にとっくに慣れている。
2024年現在、監視カメラのついていないコンビニエンスストアが全国にどのくらいあるだろうか。圧倒的多数のコンビニエンスストアに監視カメラは複数台設置されているはずで、むしろカメラがない店の方が気味が悪い。そのような体制で従業員や客を守ることができるのかと心配になるほどである。犯罪の温床になるのではないかと考える人すらいるかもしれない。
しかしほんの十数年前までは、監視カメラはここまで一般的な存在ではなかった。常に記録されることに抵抗感を持っていた人も少なくなかったはずだ。つまり、この十数年で私たちは見られることに慣れた。監視されることによる「気持ちの悪さ」よりも、データによって得られた利便性や安心感へのポジティブな感情が勝るようになってきたのである。
潔白な情報を共有することで、全体のやましさを打ち消す
さらに驚くことに、Z世代のなかには自分の情報を積極的に共有したいと考えている人もいる。サービス開発にむけて宮田氏が調査を重ねていると、ある男性は「恋人に心配をかけたくないので、自分の居場所を積極的に共有したいと考えている」と話したという。
居場所を共有しているからこそ、むしろ恋人以外の女性とも出かけやすくなったようだ。
一部の「潔白」な情報を共有することで、全体のやましさを打ち消し信頼関係を築くことを考えているようである。
企業と従業員の関係もしかり、互いが疑心暗鬼にならないよう、開示できる情報はどんどん共有することが関係構築のミソになるかもしれない。
しかしながら、宮田氏はあらゆる情報を共有させることが重要だとは考えていない。監視されることを「気持ち悪い」と感じる感性にも寄り添い、そうでない領域でデータを用いた信頼関係の構築をサポートすることが大切だと認識している。