日本に圧倒的に多い、自然発生的マルチクラウド
まず、マルチクラウドというのは、AWSやAzure、Google Cloudなどのパブリッククラウドを併用することです。 それに対してハイブリッドクラウドというのは、パブリッククラウド、プライベートクラウド、オンプレミスを組み合わせて使うというものです。これによって、AWSの持つ豊富な機能とGoogleのAIエンジン を組み合わせて使うことができるなど「いいところ取り」ができるようになります。企業にとって重要なデータはクローズのプライベート環境に置いておく。そこまで重要でないものはどこからでも使えるようにしたり、利用頻度が高くない場合は従量制課金制のサービスを使ってコストを抑えたりと、クラウドならではの恩恵を受けられるようにします。
このように多くの企業は、ベストな環境はクラウドなのか、はたまたオンプレミスなのかと調べたり、コンサルやSIerに意見を聞いたりしながら、選択していきます。 つまり、最初から誰かが意図したわけではなくて、結果的にマルチクラウド/ハイブリッドクラウドになりやすい。このような状態を、自然発生的マルチクラウドと呼びます。
調査会社のガートナーは、マルチクラウドの形成の仕方には三つあると述べています。先ほど説明した自然発生的マルチクラウドは、気づいたら企業内で複数のパブリッククラウドを使っていたという、いわゆるシ ャドーITの状態。シャドーITというのは、会社に公認されていないITをこっそり使うことです。このようなケースでは、ガバナンスは効いておらず、社内はクラウドのカオス状態になっていると言われています。
興味深いのは、このように形成されたマルチクラウドが、日本国内に圧倒的に多いとも言っていることです。これは、欧米企業においてはITシステムの選定がトップダウンでなされるのに対して、日本企業においてはボトムアップで現場からのニーズを受けて経営層が最終判断するケースが多いからだと思われます。