Modern Times編集部

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(写真:Macrovector / shutterstock

MEC(Multi-access Edge Computing)

「MEC(Multi-access Edge Computing)」とは、5Gネットワークにおいて、端末により近い位置にサーバーを配備する仕組みです。詳しく解説します。

Updated by Modern Times on November, 25, 2022, 5:00 am JST

「MEC(Multi-access Edge Computing)」とは5Gネットワークにおいて、端末(ユーザー)により近い位置にサーバーを配備する仕組みです。5Gの3つの特徴である“高速・大容量”“低遅延”“多接続”のうち、主に低遅延を実現するための技術です。ローカル5G端末やWi-Fi機器、IoT機器などからのアクセスを想定したエッジコンピューティング(エッジサーバー)の規格です。

モバイルに特化した規格

最近のサーバーはクラウド上に設置されることが多く、端末とはインターネットを介して通信するのが一般的です。端末とサーバーの間の距離が遠くなることで通信に遅延が発生してしまい、リアルタイム性が必要なサービスを実現する場合に問題となることがあります。特に、映像データなどの大容量のデータを扱う解析システムを利用する場合、現場でのレスポンスの遅延や通信量の増加が課題となります。そこで、インターネットに出る前の社内ネットワークやローカル5Gネットワークといった、より端末に近い場所にエッジサーバーを構築することでレスポンスを早めて低遅延を実現します。

単にエッジコンピューティングと言った場合、端末自体または端末の近くに分散配置されたサーバーでデータの処理・分析することを指します。一方、MECはETSI(European Telecommunications Standards Institute:欧州電気通信標準化機構)が標準化を進めるエッジコンピューティングの規格の一つであり、主にスマートフォンやIoT機器などのモバイル機器からの利用を想定したエッジコンピューティング技術です。つまり、エッジコンピューティングはネットワークコンピューティング技法を指す言葉で、MECはそのなかでもモバイルに特化した規格を指す言葉になります。

自動運転やIoTの実現に欠かせない通信規格

MECでは、モバイル端末やIoT機器などで発生したデータを、クラウド上のサーバーにすべて送らずに、より端末に近い部分で処理します。そのため、処理に対するレスポンスが早く、クラウド上のサーバーからの応答を待つよりも高速な処理を実現します。例えば、従来では処理時間に加えて発生していた数百ミリ秒程度の遅延が、MECでは数ミリ秒程度に削減することが可能です。

超低遅延のリアルタイム通信が実現できることで、新しいサービスの実現が期待できます。例えば、信号機や通行人など周囲の道路状況を瞬時に把握・判断して対応しなければならない自動運転技術を実現するには、必須の技術と言えます。

今後IoTが普及し、ネットワークに接続する端末の数が爆発的に増えると、ネットワーク帯域が圧迫される危険性があります。MECを使うと、ネットワーク負荷の低減も期待できます。モバイル端末やIoT機器などで取得したデータすべてをそのまま送るのではなく、何らかの処理をしてから必要なデータのみをクラウド上のサーバーに送ればよいため、ネットワーク帯域を圧迫する可能性が少なくなります。

MECを使うと、安全性を高めたセキュアな通信も実現できます。オープンなネットワークであるインターネット上では、常に第三者からの攻撃や盗聴のリスクがあります。インターネットに出る前のエッジサーバーでモバイル端末などからのデータを含む重要なデータを処理し、匿名性の高いデータへ変換したうえでクラウド上のサーバーへ転送することで、サイバー攻撃や情報漏えいなどのリスクを回避したセキュアな通信が実現可能です。