競争力を上げるために必要なもの
――生成AIを使って競争力を生み出すためには何が必要なのでしょう?
白井 ユースケースを適切に設定することが成否を分けるポイントだとわかってきました。生成AIをどの業務で、どのタイミングで使うかをきちんと設定することが重要です。例え効率化したとしても大きなインパクトのない業務に生成AIを適用してしまうと、コストに見合った成果が得られないことがあります。
また、生成AIには向いている業務と向いていない業務があります。生成AIの技術や精度を高めることよりも、どの業務に適用するかをしっかりと見極めることが最も重要です。
――目的をきちんと設定しないと、良い道具があっても結局使いこなせない、ということですね。生成AIはその目的を洗い出すためにも使えるかもしれません。
白井 そのような使い方もありだと思います。コストが増えるわけではないので、どんどん活用していけば良いと思います。
――具体的にどのような業務が生成AIに向いているのでしょうか?
白井:例えば、メールの文章作成や報告書の作成など、現在人が行っている業務を代替することが王道です。人手がかかる業務で成果が出る場合、生成AIを使う意味があります。しかし、成果を生まない業務に適用しても意味がありません。そのため、まずは業務を選別していくことが重要です。
――生成AIを導入するにあたっては業務の棚卸しが必要かもしれません。
白井 その通りです。生成AIを活用するプロジェクトを始める際には、まず業務の可視化とフローの整理を行います。それだけでも無駄なフローが見つかり、効率が上がるかもしれません。
無闇矢鱈に集めても使えない
――「競争力を生み出すデータの質」について伺います。データの「質」とは具体的にどのようなことを指しているのでしょうか?
白井 データは、存在していても、その正体がわからないと使えない場合があります。注文日なのか売上計上日なのかが曖昧なデータなどがその典型です。このようなデータは質が低く、後で使おうと思っても手間がかかり、効果が得られないことが多いです。そのため、収集の段階でしっかりとデータを整理し、使える状態にしておくことが重要です。
――データの質を高めるためには、収集時に注意することが肝心なのですね。
白井 その通りです。データの整理は後でやろうとすると非常に困難になります。収集の時点で適切な設定を行い、 データの質を保つことが最も効率的です。
多くの人が、意味がわからない映像に不快感を抱いた?
――マクドナルドの生成AIによるCMが不評だった理由について伺います。白井さんのご意見をお聞かせください。
白井 CMの注目度という意味では、賛否両論あっても成功だと思いますが、個人的にはやはり不気味さを感じました。何となく意味がわからない映像が次々と出てくるという点で、多くの視聴者が不快感を抱いたのではないかと思います。特にCMの枠では、意味が取れない映像が流れることに慣れていない視聴者が多いと思います。その違和感が不評の原因の一つだと考えています。
――最後に「デザインアプリ『Procreate』が生成AIに反対の立場を表明」について伺います。この表明についてはどう思われますか?
白井 Procreateがクリエイターを守るために生成AIを導入しないという立場を明確にしたことは、大きな決断だと思います。クリエイティブ業界では、生成AIが既存の作品を無断で学習し類似作品を生成しており、クリエイターに影響を及ぼしています。Procreateのようなツールが、クリエイターをサポートする立場を明確にしたことは、業界全体にとっても重要な一歩だと考えます。
――今後、他のツールやクリエイターの動向にも注目が集まりそうですね。
白井 そうですね。生成AIがクリエイターに与える影響をどのようにコントロールするかが、今後の重要な課題です。私たちGenerative AI JAPANも今後この分野で貢献していきたいと考えています。
参照リンク
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お絵描きアプリ「Procreate」が生成AI反対の立場を明確に表明