――50%以上の企業がリスキリングのためのeラーニングに満足していないとのことですが、そもそも現在、どのくらいの企業が社員のリスキリングに取り組んでいるのでしょうか。
松葉 現状では、約65%の企業がリスキリングに取り組む意向があるという結果が出ています。しかし、その中で既に取り組んでいるのは約27%にとどまっています。去年から社内でのリスキリングが話題になっていますが、実際に着手できている企業はまだ少ないという状況です。
――その背景には何があるのでしょうか。
松葉 取り組めていない理由としては、まず予算の問題が挙げられます。企業の規模によって、例えば大手では50%以上の企業が取り組んでいますが、中小企業では20%未満、パート・アルバイトなどでは10%未満と、大きな差があります。特に中小企業では、コストの負担が大きく、実施が難しい場合が多いです。一方、大企業では多くの資源を投入できるため、実施が進んでいます。また、経営層の関与がどれだけあるかも大きな要因で、大手企業では専門の部署や責任者がいるため、積極的に推進されています。
――経営者の意思と実際に運営できるかどうかが大きな障害になっているということですね。
松葉 そうですね。その前提として、予算の確保ができるかどうかが鍵となります。また、 今回の調査はeラーニングに焦点を当てているため、その他のリスキリングについてはわかっていない部分もあります。
―― eラーニングは導入が比較的容易に思えますが、実際には障害があるのですね。
松葉 その通りです。eラーニングで行われているリスキリングの内容としては、情報セキュリティやコンプライアンス、ハラスメント対策が多いです。その他には、一般的なビジネススキルや個人情報保護、専門知識の習得も行われています。
――目の前の課題に対応するためのアップデートが中心になっているのですね。
松葉 はい、ただ本来のリスキリングの目的は新しい専門知識を得ることですが、現状ではハラスメント対策など、企業として必須の内容が中心になっています。現状のeラーニングで実施されているハラスメントや個人情報保護、コンプライアンスは、定期的に実施することに意義があると思います。しかし、リスキリングについてはまだまだこれからだと感じています。
――その点について、何か感じられたことはありますか。
松葉 そうですね、まず従業員のスキルの不足を把握し、学びたい内容を確認しないとリスキリングの効果は薄いと感じました。現在は、大手でも中小企業でも、個別にカスタマイズされたリスキリングプログラムの準備が十分ではないと感じています。
――社員のニーズに合わせたリスキリングの解決策はあるのでしょうか。
松葉 スキル管理や研修プログラムの構築、クイズによる効果測定などを通じて進めていくことが重要です。特に中小企業では外部のパッケージを導入する必要があるかもしれません。eラーニングは、集合研修の代わりに場所の確保をせずに実施できるメリットがあります。経営層が率先して、リスキリングやeラーニングを推進していただきたいです。
――ありがとうございました。