IDCの調査によると、日本国内におけるクラウドサービスの2022年の市場規模は対前年比37.8%増の5兆8,142億円となったようだ。従来のオンプレミス上のシステムをクラウドに移行する、DX推進のための新たなシステムをクラウド上に構築するなどを要因にした急伸である。もっとも、2022年は、半導体の供給が遅れたために、ハードウェアが入手しにくくなり、オンプレミスでの構築が難しかったことによるクラウド移行が増えたという背景があり、IDCでは2023年の市場成長の伸びは鈍化すると予想している。
DX利用が加速するクラウド
それでもクラウドサービスの市場規模は拡大を続け、2027年には2022年の約2.3倍の13兆2,571億円となるとIDCは予測している。
IDCのグラフから読み取れるのは、DX推進のためのクラウド活用が、今後一層拡大していくことである。IT市場では、DX推進はクラウドファーストとなっているようであり、クラウド市場は拡大するということに異論はなかろう。さらには、オンプレミスからクラウドのリプレイスも順調に増えると予測されている。
一方でクラウドの活用は、DXへの適用が進むことにより、「データを預ける」から「データを活用する」といったステージに入ってきている。つまりは、これまではデータを単に預けるために価格でクラウドベンダーを選んでいたものを、ただ預けるだけではなく、預けたデータを活用する、データマイニングをするために、どこのクラウドサービスを使うべきかといった議論が今後はなされるであろう。Modern Timesでは、これまでに多くの記事でデータ活用とクラウドサービス選択のポイントを紹介してきているので、参考にしてほしい。
オンプレ回帰を実行する前にクラウドの価値を精査
そして、ここにきて、「オンプレ回帰」という言葉を目にするようになってきた。
オンプレ回帰とは、クラウドサービス上で構築したものを自社リソースであるオンプレミスに戻すという行動である。なぜオンプレに戻すかは、クラウドサービスの価格が思ったよりも高かった、パフォーマンスが出ない、セキュリティ面が心配――などが挙げられている。その理由は、オンプレに戻す企業によってまちまちのようだ。
ただ、理由を一つ一つ見ていくと、「なる ほど、オンプレに戻した方がいいじゃないか」とは素直には思えなくなってくる。
価格面については、オンプレの機器の入れ替え、移行作業、サービスの契約などが必要になり、それならばクラウドの方がいいといったことで選択したのではないであろうか。確かに、外資系クラウドを利用していることで、円安によるコストアップは否定できない。であれば、オンプレに戻すというよりも、国産クラウドに目を向けるという方法もあるのではないか。
パフォーマンスは、複数ユーザーの同時利用などによる低下がみられるようだが、これは契約形態を見直すとか、契約するクラウドサービス、他のクラウドサービスを比較するなどで、パフォーマンスを確認するなどで対応が出来ないであろうか。
セキュリティ面については、オンプレミスに戻して当該システムのセキュリティをクラウドサービスと同等に担保できる技術者を有しているかどうかも確認が必要である。サイバー攻撃自体が増えていることを考えると、セキュリティ面はデータ活用を推進するに当たって非常に重要であるはずである。
以上のように単純な話ではなく、「オンプレの方がコスト管理はしやすく、カスタマイズも容易」などと複合的な観点から優れていると判断してオンプレ回帰するケースもあるだろう。それでも、DXを推進していくためには、柔軟性に優れ、新技術への対応が早いクラウドの活用は武器になる。単にオンプレに戻すことを考えるのではなく、システムを見直して必要な部分のみをオンプレにするハイブリットクラウド構成を採るなどの方法もある。契約しているクラウドサービスのどこ が魅力でどこに問題があるかを、まずは精査してみてはいかがだろうか。
参照リンク
IDC Japan株式会社
国内クラウド市場予測を発表
国内ITインフラ市場予測を発表