Kaede

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(写真:PradeepGaurs / shutterstock

交通渋滞と出稼ぎ労働者によって伸びるデリバリー市場

Stastiaのデータによれば、インドの食品デリバリーの市場規模は、今後4年間で2倍に成長するとされている。デリバリー市場がこれほど大きな進展を遂げる背景には、都市の過密化が関係するようだ。これを契機にインドでギグワークにまつわる日本人も現れた。インドのテックシティ・バンガロール在住のKaede氏が実情をレポートする。

Updated by Kaede on May, 8, 2023, 5:00 am JST

日本でも同様のデリバリーサービスが展開できるかも

日本でもUber Eatsを筆頭にギグワーカーによるデリバリーサービスが広がっており、今後その内容は多様化していくことが見込まれる。そこで、ここからは最近インドで展開しているデリバリーサービスをいくつか紹介したい。日本でデリバリーサービスをはじめてみたいという人への参考になれば幸いだ。

「10分デリバリー」クイックコマース

「アプリで注文した食料品が、たった10分で自宅に届く」
こうした超高速の「クイックコマース」が、バンガロールやデリーなど、インドの都市部で展開している。

野菜・果物などの生鮮食品、加工食品、日用品まで、アプリで注文すると、近隣の店舗や配送センターで商品をまとめ、玄関まで届けてくれる。エリアにもよるが、市内中心部のエリアだと、注文してから10分~15分ほどで商品が届く。24時間対応可能なサービスもある。

バンガロールに在住している筆者も、頻繁に利用している。
先日、思い立って真夜中12時頃に料理をし始めたとき、牛乳や野菜などが必要になった。近くの食料品店はとっくに閉店していたので、「Swiggy Instamart」というアプリで注文したところ、ほんの10分で玄関まで商品が届いた。配達料金はたったの50ルピー(約80円)。スーパーマーケットの営業時間外や、買い忘れがあったときに頼りになるサービスである。

こうしたクイックコマースは、筆者が知るだけでもバンガロールには4社ある。
バンガロール発の 「Zepto」、デリー発の 「BlinkIt」 、インド版 Uber Eats 「Swiggy Instamart」、何でも運ぶ「Dunzo」などだ。

新型コロナによるデリバリー需要の急増により、インドのデリバリーサービスは急速に浸透し、インドの都市部のミドルクラス~富裕層にとってデリバリーアプリが生活の一部になった。

「何でもデリバリー」ハイパーローカルデリバリーのDunzo

何でも運んでくれる「何でもバイク便」の「Dunzo」は、バンガロール発のスタートアップだ。日本のバイク便に近いものだが、「Dunzo」で配達可能なものは、食料品から書類、薬、レストランの料理、友人の手作り料理まで多岐に渡る。B2C(個人と店舗の間:Business to Customer)も、C2C(個人間:Customer to Customer)もサービスの領域内だ。

Dunzo のアプリ画面。近隣のストアでオンライン購入した、食料品から薬、また近隣の人への配送まで、何でも配達を請け負ってくれる。(筆者撮影)

Dunzo は、「ハイパーローカルデリバリー」と呼ばれ、半径10〜15km圏内のエリアで、配達員を回転させることで、迅速なピックアップとデリバリーを実現している。2015年に開始したサービスだが、コロナ禍で一気に成長した。

上記に挙げた「クイックデリバリー」の先駆け的存在であり、食料品のデリバリーや、友人や親戚にモノを送りたいときなど、「何か運びたい時には Dunzoで」というわけだ。バンガロールでは最もポピュラーなデリバリーサービスの一つである。

多種多様なオンラインスーパーマーケット

バンガロールで最もポピュラーなオンラインスーパーのひとつが「Big Basket」である。
Big Basket は、その他のオンラインスーパーの中でも、商品の種類が豊富で、約18,000種類、1,000以上のメーカーの商品が常時揃っている。アプリから注文をすると、翌日には届く。

「Big Basket」の配達員。バイクやトラックなどで配達してくれる。(筆者撮影)

自社ブランド商品や、コスメストア、日用品なども多数扱っており、生活に必要なあらゆるものが、このアプリ一つで購入できるようになっている。そのほか、日本でもおなじみの「Amazon Fresh」も、インドではポピュラーだ。

ニチレイフーズが出資する「安全」「高品質」を第一に掲げたサービス

特定の食材に特化したオンラインスーパーもある。
日本のニチレイフーズが出資する「Licious」は、肉、魚介類に特化したオンラインスーパーマーケットだ。

インドの食料品店では、「ベジタリアン」「ノンベジタリアン(肉、魚などの動物性食品)」の売場が厳密に分かれている。フロアやセクションを分けたり、「ベジタリアン」の商品しか扱っていないスーパーマーケットも多数ある。インドの大多数を占めるヒンドゥー教では「浄」「不浄」の概念があり、肉や魚を扱う食料品店やレストランには絶対に行かない(忌避するものと考える)人々も多いためだ。

「Licious」は、「安全」「高品質」を第一に掲げており、ITを活用した需要予測をベースに、注文を受けてから120分以内に新鮮な肉や魚を届けている。

インドのごく一般的な食肉、魚介類の食料品店は、肉や魚がパック詰めされず、むき出しで販売されており、衛生的でなかったり、品質(鮮度)が担保されていなかったりする。また、基本的には大きいブロック状で販売され、調理用途に合わせて、ブッチャーに切ってもらう。

Licious の商品は、「新鮮」で「品質の高い」商品が、玄関先まですぐ届けてくれる。食肉や魚介類はパック詰めにされ、調理しやすいよう、あらかじめカットしてある。従来の路面店と比べて価格はやや高いが、安全性、利便性の高さから、ミドルクラス~富裕層を中心に好評である。

その他、特化型スーパーとしては、化学薬品や抗生物質不使用の食肉、魚を扱う「Fresh to Home」、乳製品大国インドならではの、牛乳や乳製品に特化した「Country Delight」「Milk Basket」などがある。

以上、インドの都市部で展開する、便利なデリバリーサービスを紹介した。全体的な物流サプライチェーン、交通渋滞などにより、「どこかに移動して欲しいものを買う」ことが不便であるがゆえに、多様で革新的なデリバリーサービスがインドで展開されていることを、想像してもらえたら幸いである。

参考資料
Dunzo shifts growth gears; Shiprocket is 20th unicorn of 2022(The Economic Times)
India’s Gig Economy | 28 Jun 2022
India’s gig workers: Overworked and underpaid(Times of India)