2023年春時点でクラウドトレンドを構成する要素としては、「オンプレミス」「プライベートクラウド」「パブリッククラウド」「ハイブリッドクラウド」「マルチクラウド」「オンプレミスクラウド」が代表的なものとして挙げられます。
自社でハードウェアを保有して運用・管理するオンプレミスから、クラウド利用に移行が進んでいることは大きなクラウドトレンドとして広く認識されているでしょう。
クラウドには様々なサービスや構成があります。「プライベートクラウド」は、サービス提供元の組織だけで利用できるクラウドサービスで、リソースも自らの組織で制御します。「パブリッククラウド」は、一般にクラウドサービスと呼ばれているものです。任意の組織が利用でき、リソースはクラウドサービスを提供する事業者が所有、制御します。
オンプレミスからクラウドへの移行の第一ステップは、クラウドサービス事業者が提供するパブリッククラウドの利用、または自社や自組織で構築したプライベートクラウドの 利用が主流でした。その後、「ハイブリッドクラウド」の利用が広がってきました。ハイブリッドクラウドとは、「パブリッククラウドとプライベートクラウド」、「パブリッククラウドとオンプレミス」のような組み合わせで、クラウドを利用する形態のことです。パブリッククラウドのメリットと、自組織による管轄範囲内にデータやリソースを保有できるプライベートクラウドや従来型のオンプレミスのメリットを併せ持って利用できるようにするトレンドです。
一方で、パブリッククラウドを複数利用して、適材適所で活用するマルチクラウドの利用も進んでいます。Amazon Web ServicesやMicrosoft Azure、Google Cloud Platformといったハイパースケーラーが提供するクラウドには、それぞれ得意分野があります。マルチクラウドの1つのメリットは、単独のパブリッククラウドに閉じて利用するのではなく、複数のパブリッククラウドの得意分野を生かしながら活用することです。ただし、複数の環境の統制を取り、効率的に管理するためには、多様な条件を考慮し、変化に対応できる柔軟性を持たせた設計をすることが必要です。また、あるパブリッククラウドから別のパブリッククラウドやプライベートクラウドへ移行する際には、パブリッククラウド内に蓄積した大量データを外部に転送する際にコストがかさむ料金体系などによってハードルが設けられていることに注意する必要があります。
2023年春の国内のクラウドトレンドは、ハイブリッドクラウドの浸透と、マルチクラウドの利用拡大という段階です。こうしたクラウド利用の構成から見たクラウドトレンドとして、今後のカギとなるキーワ ードとして「オンプレミスクラウド」があります。
オンプレミスクラウドとは、クラウドサービス事業者が提供するクラウド基盤そのものを、顧客の自組織のリージョンやデータセンターなどに設置して利用する形態です。パブリッククラウドと同等の機能や性能を備えながら、自組織の専用クラウドとして利用できます。プライベートクラウドとは異なり、オンプレミスクラウドは自組織内にハードウェアなどを所有して安心・安全な環境を保って利用することが可能です。一方で利用形態としては、クラウドサービスとして月額使用料を支払う形で運用・管理まで委託できます。