使うストレージを誤るとデータは活用できない
企業でも国家や自治体でも、データを活用するためのインフラはすでに不可欠だ。その適切な構築や運用にあたっては、データをどこに格納するかも考えなければならない。膨大なデータを自由に活用できるストレージ環境を選ばないと、思うようなデータ活用 の効果が得られない可能性があるのだ。
Neutrix Cloud Japanの田口氏は「企業や団体の活動の中で、最も大切なものがデータです。それだけに、自らがデータの主権を保ち、データを民主化して誰でも活用できるような環境が求められます」と語る。自分たちが主体的に活用、管理できる場所に保管されていてこそ、データ活用の効果を享受できるようになるからだ。既存のパブリッククラウドに代表されるようなクラウドサービスにデータを保管していると、データを他の環境で使うために転送する際に追加コストを徴収するといったデータロックインがなされ、データの主権が確保しにくいという。
一方で、田口氏は「今、世の中で1企業が処理できるデータ量は、必要なデータ量に比べて圧倒的に少ないのが現実です。そのため、実用的なシステムができなかったり、正しい答えが得られなかったりしています」と指摘する。データ主権を確保するために自社で管理できるデータストレージに、大量のデータを蓄積することは通常はコスト的に難しい。
中立的(Neutral)であることの重要性
データロックインされず、なおかつ低コストで大量のデータを蓄積できるようなストレージは、どのようなものが考えられるだろうか。
田口氏は、「中立的なストレージが必要」と語る。その意味は、各種のクラウドサービスやプライベートクラウド、オンプレミスのシステムなどから、等しく自在にアクセスが可能で、データ利用に過度のコスト負担がないストレージを指す。将来にわたって、デー タ活用に必要になる可能性があるデータは、色付けのない中立的なストレージに蓄積しておくことが、データ主権を確保してデータを活用するための方策というわけだ。
Neutrix Cloud Japanの社名や、同社が提供するクラウド接続ストレージの「Neutrix Cloud」につけられたNeutrixとは、中立的なことを示す「Neutral」に、名詞化する接尾辞の「rix」をつけた造語だという。社名もサービス名も、中立的なストレージを提供することを当初から想定していた。
「Neutrix Cloudは、中立的で公平なサービスを提供することを立ち位置にしています。この考えを名前で示しているのです」(田口氏)。
多様なクラウドサービスにはそれぞれのメリットやデメリットがあり、オンプレミスのシステムにもメリットと デメリットがある。そして、これらのクラウドやシステムが利用する最も大切なものがデータであり、中立的な立ち位置で提供されるストレージに蓄積することが真のデータ活用につながるという考え方である。中立的なストレージを使うことで、クラウドを活用する際に、1社にデータロックインされることなくデータ活用ができるというわけだ。
すでにハイパースケーラーに代表されるクラウドサービス事業者は、膨大なデータを確保することでそれらを解析して価値を生み出している。
「ユーザー自身も、データは膨大に持たないと価値を生み出すことが難しいでしょう。同時に、自分のデータは一定の形で主権を持って守られるべきです。また、業務の中身やデータの性質によっては、データを物理的にどこに配置するかは重要な課題でもあります。Neutrix Cloudは、そうした課題を解決できるデータの置き場所になると考えています」(田口氏)。
プライベートクラウドのネットワークを延伸することもできる
Neutrix Cloudが中立的なストレージを提供することを意図しているとして、具体的にはデータはどのように取り扱われるのだろうか。
田口氏は、こう説明する。「クラウド接続ストレージサービスのNeutrix Cloudにデータを保管しておくと、ハイパースケーラーなどのパブリッククラウドからNeutrix Cloudにアクセスしてデータを処理できます。その時、データそのものを移管する必要はなく、追加のコストもかかりません」。Neutrix Cloudにデータを保管しておけば、データロックインされるリスクがある各種のパブリッククラウドから、データの中立性を確保できるというわけだ。
一方で、プライベートクラウドからもNeutrix Cloudに保管したデータを活用できる。
「Neutrix Cloudを利用すれば、社内のプライベートクラウドのネットワークをNeutrix Cloudまで延伸できます。社内のプライベートクラウドと同等の空間をNeutrix Cloudの中に設けられるのです」(田口氏)。
その上で、プライベートクラウドのデータ保管場所として使っているNeutrix Cloudのデータのスナップショットを取ることで、パブリッククラウドからプライベートクラウドと同じデータを扱うことも可能だという。
プライベートクラウドを選択している場合、企業や団体は自社のデータセンターの外部にデータを持ち出したくないケースもある。その場合には、Neutrix Cloudをオンプレミスに提供することもできるという。
「ユーザーのデータセンターにNeutrix Cloudの機器を設置し、センターに接続する形態で利用できます」(田口氏)。
クラウドに新たな選択肢を
Neutrix Cloudが中立的なストレージサービスであることは、パブリッククラウドやプライベートクラウド、オンプレミスを有機的に結合したデータ活用基盤を作ることに寄与する。田口氏は、「データの出し入れをする際に、パブリッククラウドのように転送料を取ることがないので、データの活用の自由度は格段に高まります。ユーザーのデータ主権を確保したデータ活用が可能です」と力を込める。
Neutrix Cloudは、パブリッククラウドとプライベートクラウドやオンプレミスをつなぐハブにも、ゲートウェイにもなる存在になりうる。パブリッククラウドのメリットを生かして、一方でデータロックインのリスクを低減したデータ活用をする際に、Neutrix Cloudは柔軟なデータの利用を担保する。
田口氏は最後に、「Neutrix Cloudの技術を開発したINFINIDAT創業者のモシェ・ヤナイは、『クラウドに新たな選択肢を提供する』と語っています。クラウドの1ベンダーの利益のためではなく、顧客にベネフィットを与えるためのクラウド接続ストレージサービスを提供していくことに私たちの価値があると考えています」と語った。