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(写真:LivDeco / shutterstock

特集「Web3は男の顔をしていない」を実施します

 

Updated by on June, 3, 2022, 9:00 am JST

Webをバージョン管理する資格がある人がいるとしたらティム・バーナーズ=リー( “Tim” Berners-Lee)以外はあり得ない、と考えるのがいやしくもウェブの上で商売している人の最低限のたしなみだと思いますが、「Web2.0」が何を指し示すのかよくわらないまま雲散霧消したバズワードだったことを考えれば、Web3(またはWeb3.0)という言葉の寿命もさほど長くない可能性が高いと思われます。そもそもWeb3は、イーサリアム(Ethereum)の共同設立者の1人、ギャビン・ウッド(Gavin Wood)が2014 年に提唱した“概念”なので、Web3=NFT(非代替性トークン:Non-Fungible Token)という自己都合丸出しな定義からスタートしています(定義を巡る混乱についてはこの記事が実によく書けているので、ぜひご参照ください)。

ただし、このWeb3も含めた、欧米がITの世界で繰り出してきたコピー群の集大成が、世界を揺るがす「コロナ、ウクライナ、カーボンニュートラル」に帰結しているのだとしたら、あるいは日本のIT業界が語ってきた未来の夢の結果が「30年間横ばいでしかない所得」なのだとしたら(無論、因果関係がはっきりしないことは承知の上で、ですが)何かの分岐点(turning point)を示唆する言葉としてWeb3を担ぐのは案外好都合なのかもしれません。今までの無邪気なWeb進化論を否定する形で語ることが容認された雰囲気を勝手に感じ取ってしまったのです。世間はIT業界から発せられるバズワードや「Second Lifeを巡る空騒ぎをひた隠しにしながらメタバースを語る態度」に愛想が尽きているはずです。

「Web3.0は男の顔をしていない」というのはそういう意味です。「男」という言葉を象徴的に使ってはいますが、ここで問題にしているのは性差ではなく、父性と母性の発現の度合いであることに留意してください。いうまでもなく男性にも母性はあるし、女性にも父性はあります(ジェンダーの問題は、ある属性の人に「役割」をお仕着せることにあります)。父性は「論理的な作業」を、母性は「感情的な振る舞い」を象徴した言葉であると考えてください。ここでいう「感情的な振る舞い」とは、決して身勝手に情動を振りかざす行動を指すわけではありません。

具体的な例でご説明しましょう。医療現場はIT /DX化が進み、診療から治療までの時間が劇的に短縮されてきました。また、高度な手術を実施するためのトレーニングキット(シミュレータ)の精度が向上することで、手術そのものの成功確率も高くなっています。これは論理的な作業(=父性が得意な作業)を機械に代替させることで「高精度で効率的な処理」に成功している、と言えます。医師が「論理的な作業」から解放されることは、患者の「感情に寄り添う」時間が増えることを意味します(実際の手術の現場では父性と母性は明確に分離できませんが)。

Web2以前が「論理的な作業」だったのに比べるとWeb3以降は「感情に寄り添う」時代になるはず、という予測がこの特集のタイトル名になっています。いうまでもなく、この特集名は『戦争は女の顔をしていない』(スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ、三浦みどり(訳)、岩波現代文庫、2016)をヒントにしています(オマージュだと言っても良いかもしれません)。

(Modern Times編集部)